『家族』『遙かなる山の呼び声』:山田洋次監督=倍賞千恵子主演の「民子」三部作2本 @蒲田映画祭

蒲田映画祭から、もう2本。
今年のゲスト、倍賞千恵子主演の2作品です。
監督はいずれも山田洋次。
もう70本近くコンビを組んでいるらしく、ギネス記録ものだ。
さて、映画。

1本目は1970年製作の『家族』。
家族・山田洋次.jpg

山田洋次監督=倍賞千恵子主演の「民子」三部作の1作目だそうな(これは、知らなかった)。
長崎の離島から一家五人が、北海道道東の中標津の開拓村を目指して旅する話で、一家の主を風見精一を井川比佐志、妻・民子を倍賞千恵子、舅を笠智衆が演じている。
夫婦には二人の子どもがいるが、上は5歳ぐらいの男の子、下は生後2か月ほどの乳飲み子の女児である。

当初、老いた舅は福山の二男・前田吟のもとに身を寄せることにしていたが、心変わりをして北海道まで行くことにする。
そして、途中立ち寄った大阪で万博見物をしているうちに、娘の体調は思わしくなくなり、東京で死んでしまう。
キリスト教徒の一家なので、葬式のために教会を探したり・・・という一幕もあり、後半はかなり暗い。

旅の途中で人死にが出る、というと小津安二郎監督『東京物語』を思い出すが、たしかに、福山(広島県だ)での二男の家に身を寄せることを止めるというのも、どこかどこか『東京物語』を想起させる。

が、山田洋次監督の作劇はまったく異なり、旅の途中はドキュメンタリー映画のように撮っている。
特に、大阪梅田の地下街と万博会場入り口の雑踏の中でのシーンは、エキストラではく、実際の群衆の中でゲリラ的に撮ったようで、いま観ると生々しい迫力である。
そのような実景は列車の移動シーンにもあり、これも実際に走る列車の中で撮られている。
車窓の風景、駅舎など、多くがいまはもう失われているものが多いだろうから、貴重な映像でもある。

ただ惜しむらくは、回想シーンが多く用いられていることで、観客へのわかりやすさやエモーションを喚起するのには有効かも知れないが、少し安っぽい感じがしてならない。

山田洋次監督が『男はつらいよ』シリーズの第3作、第4作の監督を手掛けていないのは、この映画を撮っていたためであろう。
また、笠智衆がこれまでのどの映画よりも喜怒哀楽を表現している映画として憶えておきたい。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。


2本目は1980年の『遙かなる山の呼び声』。
遙かなる山の呼び声.jpg

『家族』、『故郷』(1972年)に続く、山田洋次監督=倍賞千恵子主演の「民子」三部作の3作目。
『故郷』での倍賞の役名は石崎民子であるが、この映画では『家族』と同じく風見民子である。
映画の舞台も中標津の酪農村で、『家族』のイメージを受け継いでいる。
ただし、公開当時は、1977年製作『幸福の黄色いハンカチ』に続いての山田洋次監督=高倉健主演のコンビ2作目のイメージが強かったのですが。

夫を亡くし、小学校に通う息子・武志(吉岡秀隆)とふたりで細々と酪農を営んでいる風見民子(倍賞千恵子)。
近くに住む亡夫の一族からは、「ひとりで酪農を続けるのは無理だから、土地を売って、町へ出てもいい」と言われているが、民子は頑なに夫の残した土地で生きていこうと決めている。
そんな春のある日、流れ者の男(高倉健)がふらりとやって来る。
実は彼は、以前冬のある日、道に迷ったといって民子の家を訪れていたが、その際、牛の出産に立ち会ってもらっていた、という過去があった。
素性については「とうてくれるな」という男を信用し、離れの小屋に泊め、仕事を手伝ってもらうことに・・・

という物語で、『家族』のドキュメンtリータッチからは方向転換し、やはり、高倉健のスター映画としての色彩が濃い。

なので、脇役たちも高倉健を際立たせるための三枚目が多く、ハナ肇、武田鉄矢、畑正憲、渥美清とちょっと多すぎ。
そのため、現実感が薄くなり、最後も作為が目立ちすぎという感じが強い。

とはいえ、馬を疾駆させる高倉健や、抒情溢れる佐藤勝の音楽、それに別れる日の前夜にみせる未亡人として民子の女の性(そこはかとしたものなのだが)など、見どころもある。

抒情溢れるスター映画としては上々の出来かもしれないが、やはりちょっと嘘くさいんだよね。

なお、吉岡秀隆が『男はつらいよ』シリーズで満男役を演じるのは、この映画の直後なので、倍賞=吉岡の母子コンビはこの映画が最初だと思います。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品:80本
 外国映画62本(うちDVDなど10本)
 日本映画18本(うちDVDなど 4本)

旧作:2019年以前の作品:76本
 外国映画51本(うち劇場鑑賞13本)
 日本映画25本(うち劇場鑑賞10本)←カウントアップ
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