『スパイの妻<劇場版>』:ヒッチコック、ポランスキー、黒沢清 @ロードショウ

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黒沢清監督最新作『スパイの妻<劇場版>』、ロードショウで鑑賞しました。
もとはNHKで放送されたテレビドラマだが、そちらは未見。
本作でヴェネチア国際映画祭・銀獅子賞(監督賞)受賞。
黒沢作品というと、異様な迫力・・・しかしながら物語が破綻、というのが個人的に印象なのだけれど。
さて、映画。

1940年(昭和15年)、太平洋戦争勃発前の神戸。
貿易会社を営む夫の福原優作(高橋一生)と妻の聡子(蒼井優)は緊迫する世情の中でも何一つ不自由なことなどなく暮らしていた。
そんなある日、貿易商仲間の英国人がスパイ容疑により警察に連行され、優作は彼の保釈金を支払って助けるという事件が起こる。
が、優作は、忘年会の余興として、聡子と甥の文雄(坂東龍汰)をつかって、8ミリ映画を撮るほどの余裕もあった。
しかし、仕事で満州に渡り帰国してから後、優作の態度は変化する。
同行した文雄も同じく・・・

といったところから始まる物語で、聡子が優作が満州から情婦を連れ帰ったのではないかと疑心暗鬼するさまがサスペンスフルに描かれていきます。
が、優作が満州から持ち帰ったのが情婦ではなく、国家機密だということが中盤明らかになり、タイトルの『スパイの妻』と相成る次第。

謳い文句では「黒沢清監督が初めて描く"歴史の闇"」というような、あたかも歴史物、歴史秘話モノのような売り方もされているが、そんな真面目な歴史映画ではなく、あくまでもサスペンス・スリラー。
テイスト的に近いのはロマン・ポランスキー監督の『ゴーストライター』。
全編に不穏な空気が漂う演出を行っています。

また、モチーフとして用いられる「国家機密」は、ここでは「関東軍の生体実験の記録ノート及び映像」であるが、それは本当のところは何でもいい。
国家機密を暴露するのが映画の目的ではなく、これはあくまでヒッチコックいうところのマクガフィン。
映画のサスペンス、スリルを高めるための小道具。

マクガフィンを巡っての官憲との争奪戦に見せかけて、その実・・・劇中の「お見事!」のセリフどおりとなる駆け引きが見どころ。
これには、「やられた! 降参!」でした。

演技陣では、聡子の幼馴染で、神戸憲兵分隊長を演じる東出昌大は、相変わらず、何を考えているのかわからない不気味さを醸し出していて魅力的。
主役の高橋一生も、実のところ、何を考えているかよくわからない男を淡々と演じているし、聡子役の蒼井優も、夫に振り回されてか、それとも自らグルーヴィングして躁鬱的に変化していく、まるでマクベス夫人のようなデモーニッシュな妻を怪演している。

ということで、歴史映画ではなく、スリラー映画。
「お見事!」な結末をお愉しみくださいませ。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

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2020年映画鑑賞記録

新作:2020年度作品: 77本
 外国映画58本(うちDVDなど19本)
 日本映画19本(うちDVDなど 4本)←カウントアップ

旧作:2020年以前の作品: 63本
 外国映画56本(うち劇場鑑賞 8本)
 日本映画27本(うち劇場鑑賞 4本)
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