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zoom RSS 『共喰い 』:男女の主客があっという間に逆転する終盤、それが見所 @ロードショウ・単館系

<<   作成日時 : 2013/10/29 00:44   >>

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田中慎弥の芥川賞受賞作の同名小説を荒井晴彦が脚本し、青山真治が監督した『共喰い』、公開からおおよそ1ヶ月経てムーヴオーバー館で鑑賞しました。
あっ、ムーヴオーバーというのはロードショウ時の劇場から劇場を代えて続映することです。
シネコン世代には馴染みがないでしょうか、かつてはよくありました。
さて、映画。

昭和の終り63年、下関の川が流れる河口の田舎町。
海からの潮が満ちては引いていく。
17歳の高校生少年・東馬は、祭りが近づく夏休みの日々、実家で無為に過ごすしかない。
父親・円は暴力的で、同居している女性に暴力を振るいながらのセックスを愉しむ。
いまは父親と別れて鮮魚店を営む母親は、そんな父の暴力から逃げだしたのだ。
東馬は、幼馴染の千種との若いセックスに悶々としているが、奥底に流れる父親の血が、彼に暴力的な衝動を呼び起こそうとしている・・・

「Like Father, Like San」、この親にしてこの子あり。
本年2013年初めに登場した『千年の愉楽』に通じる血の物語です。

そのドロドロとした・・・と言いたいところですが、青山真治監督の描写に意外と力がない。

のっぺりとした、とでもいいのか、奥行だとか匂いが感じられない。
下関の夏の、かつてはドブに近かった川の匂い、少年の青い性のの匂い、成熟した男女の饐えた匂いなどが感じられないです。
まぁ、この血のドロドロしたハナシ、そんな噎せ返る匂いいっぱいだと、息苦しかったかもしれませんが。

また、父親と息子のハナシから、終盤あっという間に女性の物語に主客が転換するのですが、そこいらあたりも意外とうまくいっていないです。
(たぶん、荒井晴彦の脚本では、ここが書きどころの見せ場なんでしょうが)。

それは、たぶんに、男の暴力の象徴としての「手」の描写が生ぬるいからでしょう。

セックスの最中に打擲する手、それは男の荒々しさ、理不尽な暴力、ひいては戦争へと繋がる象徴。
東馬の母は、かつて戦渦に巻き込まれ左手を失くしており、文字どおり、男に対して手も足も出ない。
(いや、逃げ出したのだから、足はあったのか)

その男の理不尽さという禍に終止符を打つために、東馬の母は義手でもって、父・円の息の根を絶ちます。
それは、かつて自分の左手を奪った大きな暴力・戦争に対する落し前でもあるわけです。

そして、そののち、落し前を目撃した東馬は千種とのセックスにおいて両手を縛られ征服されます。

「手」を象徴として男性女性の主客が逆転するわけです。
ですが、前半の「手」を用いた描写が、これまた文字どおり「手ぬるい」わけで、この映画のテーマがどこか拡散したように感じられました。

映画全編を物語る成長した東馬のナレーションを、父親・円役の光石研が演じていますが、その父・息子の一体描写も意外と効果がありません。
たぶんに、光石研がミスキャストなのかもしれません。
どんな瞑い眼をしても、どこか陽気でひとを惹きつける性格な彼が、この物語にはあっていなかったのかも。
声も朗るいしねぇ。

まぁ、かなり不満はあるのですが、つまらないわけではなく、興味深い映画であることに変わりはありません。

評価としては★3つ半としておきます。

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2013年映画鑑賞記録

 新作:2013年度作品
  外国映画32本(うちDVD、Webなどスクリーン以外16本)
  日本映画19本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 4本)←カウントアップ

 旧作:2013年以前の作品
  外国映画47本(うち劇場 2本)
  日本映画 9本(うち劇場 1本)
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