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zoom RSS 『霧の中の風景』:圧倒的な映像と演出に魅入られて @名画座・フィルム上映

<<   作成日時 : 2014/04/14 00:48   >>

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今年早々に劇場で観た『エレニの帰郷』が遺作の20世紀の巨匠テオ・アンゲロプロス。
しばしばお世話になるキネカ大森30周年イベントで見逃していた本作『霧の中の風景』が上映されるということで、休日の午前中に足を運びました。
テオ・アンゲロプロスは好きな監督のひとりですが、その重量感から見逃した作品も多く、この作品もその1本。
彼の作品のなかでは判り易いとの評判の作品でありましたが、さて。

ギリシャに暮らす12歳の少女ヴェーラと5歳の弟アレクサンドロス。
母から、ドイツに働きに出かけたと教えられた父の帰還を待って、毎夜に駅に出かけます。
いっこうに帰ってこない父を慕って、ふたりはドイツに行こうと決心し、列車に乗り込みます・・・

映画は幼い姉弟のあてどのない旅の物語です。

旅が始まってすぐに、母の弟から、ドイツに出かけたという父というのは存在せず、ふたりは私生児だということを聞いてしまいます。
しかしながら、ヴェーラはその話を信じず、ドイツへ向かうことを決意します。

ふたりの旅は、彷徨へ変わっていきます。

何を求めての彷徨なのか。
不在の父は何の象徴なのか。
気がかりではありますが、圧倒的な映像の力と演出に観入って、魅入られてしまいます。

たとえば、警察署に連れられたシーン。
二階の廊下に待たされた姉弟。
ゆっくりとした移動撮影で、ドアの向こうの部屋の窓から雪が降ってくるのがみえます。
警察官たちは「雪だ雪だ」といいながら、部屋から、建物から出ていきます。
遺されたふたり。
ドアを挟んだ反対側にひとり座り、「私は荒縄を首にかけた・・・」とつぶやき繰り返す老女をよそに、ふたりは警察署の外へ飛び出していきます。
建屋の外には、空を眺め、停まってしまった大人たち。
ヴェーラとアレクサンドロスだけが駈けていきます。

たとえば、夜の雪模様の街のシーン。
石造りのビル街を歩く姉弟。
あるビルでは、結婚パーティが開かれているもよう。
ふたりがビルの手前までくると、ビルの中から花嫁が駈けだしてくる。
花婿らしき青年が花嫁を引き戻していきます。
なにごともなかったような夜のしじまに、死にかけた馬をひいた車がやってきて、その馬を道端に置き去りします。
その馬はまだ若く、ふたりの前で死んでしまいます。
馬の死を見つめるふたりの後ろを、結婚パーティを終えた一群が通り過ぎていきます。

これらのシーンは、ワンシーンワンカット、もしくは極めて少ないカット割りで撮られています。
ゆっくりしたカメラの動き、人物たちの出入りのタイミング、セリフの入りかた、効果音の入りかた、それらひとつひとつが圧倒的な力で迫ってきます。
個々のシーンが何を象徴しているか、考えさせる暇もなく、ただただ圧倒されるだけです。

本作では、幼い姉弟のあてどのない旅・彷徨というシンプルな構成により、個々のシーンの魅力が直截に伝わってきます。

とはいえ、ただあてどない旅の行く末には、確固たるイメージがあります。
それは、霧の中に生える一本の樹。
冒頭では姉が、巻末では弟が語る、すべては混沌から生まれた、という物語。

行き先は、ギリシアのどこかではなく、ドイツという別の国。
そのドイツへいくのには、川を渡らなければならないことと、渡ろうとした姉弟に向けて響く国境警備の銃声。

樹は、生命と秩序の象徴でありましょう。
混沌の中から、力強い生命と秩序が生まれる、生命が生まれる前には、いくつかの死がある、ということでしょう。
それにしても、深い霧の中から一本の樹があらわれるラストシーンは、驚くべき美しさであります。

テオ・アンゲロプロス監督の抒情性が色濃く出た本作の評価は、★5つとします。

<追記>
ギリシアの歴史からみると、60年代後半〜70年台前半は軍事独裁政権時代、その後は共和制時代であるが80年代に入って親ソ連派の左派政権であった。
本作の製作は1988年なので、左派政権時代。
翌1989年11月10日にベルリンの壁が崩壊して、まもなく冷戦が終結したことを考えると、樹は政治的ななにかを象徴しているようにも感じられます。

          

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2014年映画鑑賞記録

 新作:2014年度作品
  外国映画 9本(うちDVDなど 1本)
  日本映画 5本(うちDVDなど 0本)

 旧作:2014年以前の作品
  外国映画35本(うち劇場 3本)←カウントアップ
  日本映画12本(うち劇場 3本)
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アンゲロプロスは嫌いではありませんが、と言って、進んで観るようとは思わない監督です。当然この作品は未見ですが、なるほど、このような内容の映画でしたか。壮大というか、抽象というか、やはり私には手におえない監督のようです。
ぷ〜太郎
2014/04/14 15:58

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