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zoom RSS 『フォックスキャッチャー』:愛なき虚像の指導者に米国の暗黒面をみる @ロードショウ・単館系

<<   作成日時 : 2015/02/18 16:10   >>

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カポーティ』『マネーボール』のベネット・ミラー監督作品『フォックスキャッチャー』。
「文句なしのアカデミー賞候補」の謳い文句。
にもかかわらず作品賞でのノミネートはない(ただし監督賞ではノミネートされている)。
むむむ、どういうことかしらん。
カポーティ』はまだしも、『マネーボール』は肌が合わなかったので、どうしようかしらん、と悩んでいたところ。
予告編を観て、この不穏な雰囲気はただものではない、と感じて、公開4日目の会員割引デイを利用して鑑賞しました。
さて、映画。

フォックスキャッチャー・ファームは、米国財閥のデュポン家が管理する広大な敷地。
かつて、ジョージ・ワシントンが数千の兵を率いて戦った地として名も高い。

デュポン家の御曹司(といっても、もう50歳だが)のジョン・E(Eはイーグルの略)は、自身でレスリングチームを率いている。
ジョン・Eは、男が肉体だけで競うこのスポーツを、とてつもなく男性的と感じている。
そして、そのチームの指導者であることに、かつてのワシントンのような真のリーダの姿を投影している。
ただし、ジョン・Eの母には、馬術競技が最高最善のスポーツであり、レスリングは下品なものと毛嫌いしてる。

一方、3年前のロサンゼルス五輪で金メダルを得たレスリング選手のマーク・シュルツは、辺鄙な片田舎の町で貧しい生活を続けている。
練習パートナーの兄デイヴも金メダリストであり、裕福ではないが家庭も持ち、レスリング協会からコーチの要請を受け、幸せに暮らしている。

世界大会が間近に迫ったある日、マークはジョン・Eからフォックスキャッチャーへの招聘を受ける。
ジョン・Eの援助により、マークは世界王者となり、ジョン・E自身がその指導者として名を成そうというのである・・・

ストーリーだけ書いていると、ほとんどスポーツ根性ドラマみたいなんだけれど、映画はまるっきりちがう。
スポーツの熱い情熱を排除した、冷たく暗い熱情(病熱とでもいうような)の妄執にとらわれているような雰囲気。

ジョン・Eの想いは「妄執」という言葉が相応しい。
そして、その妄執が心底怖い。

なぜなら、指導者になろう、そして皆から人生の師として仰がれたいと欲する源に「愛情がない」から。
ただただ、虚栄。
指導者の巨像ではなく、虚像があるだけ。
選手に対する愛はない。

なので、マークは世界大会で優勝したにもかかわらず、その後ジョン・Eに甘やかされスポイルされ、ドラッグにハマって堕ちていく。

転落したマークを立て直そうと、兄デイヴを呼び寄せるも、時すでに遅し。
いくらデイヴが愛情を注ごうが、一旦喪ってしまったマークの心は甦ってこない。
役に立たなくなった選手は用済みだ、といわんばかりにジョン・Eは無情にマークを捨ててしまう。

ここまでならば普通の映画なのだけれど、この後が凄い。

ジョン・Eは、自分が立派な指導者であることを証明する目的でドキュメンタリーを撮らせており、その出来上がった作品を観る。
そのドキュメンタリーに映し出される自身の姿。

世界王者に輝いたマークが抱きつく自分は、観客席にいる!
試合の現場、すぐ横のコーナーにいるのは、デイヴなのだ。
デイヴこそ「愛情を持つ真の指導者」なのだ。

嫉妬から、「情を持たない虚像の指導者(ジョン・E)が、愛情を持つ真の指導者(デイヴ)を、殺してしまう・・・

この映画のもうひとつの惹句「なぜ大財閥の御曹司は、オリンピックの金メダリストを殺したのか?」は、これ。

この映画が、アカデミー作品賞にノミネートされない理由は明らかだろう。
ジョン・Eのように、指導者としてこれほど病んだ者を主人公にした映画に、最優秀作品賞をあげるわけにはいかない。

アメリカの暗い一面を描き切った秀作として評価したい。
評価は★4つ半としておきます。

<追記>
翻ってみるとダメダメ野球チームを立て直した感動編として売られた『マネーボール』。
あの映画を観たときの居心地の悪さは、実はアメリカ流マネジメントを批判していたのでしょうね。



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2015年映画鑑賞記録

新作:2015年度作品:8本
 外国映画 6本(うちDVDなど 0本)←カウントアップ
 日本映画 2本(うちDVDなど 0本)

旧作:2015年以前の作品:18本
 外国映画13本(うち劇場 2本)
 日本映画 5本(うち劇場 0本)
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
これは凄い映画でしたね。
愛は教えられない、愛を与えられず育った人は永遠に愛を知らずに生きるしかない・・・何という不幸。俳優それぞれが名演でした。
jyamutomaruko
2015/02/18 18:13
jyamutomarukoさま、コメントありがとうございます。
貴ブログも読みました。
こういう作品が出てくるあたり、まだまだアメリカ映画も捨てたもんじゃないですね。
アカデミー賞では監督賞、主演男優賞あたりが有力かしらん。
りゃんひさ
2015/02/18 23:02

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