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zoom RSS 『ドグラ・マグラ』『夢野久作の少女地獄』:論理的明晰映画と生理的混沌映画 @名画座

<<   作成日時 : 2016/06/22 22:46   >>

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ここのところ、ひと月に1回の割合で出かけている名画座。
今回は、没後80年の夢野久作の原作映画2本立て。
1988年製作の『ドグラ・マグラ』は初公開時にも観ているが、1977年製作の『夢野久作の少女地獄』は今回が初鑑賞。
いずれもフィルム上映で、ぼろぼろフィルムだったらどうしようと懸念はあったものの、かなり新しいプリントで、まずは大満足。
フィルムに散見される疵や埃跡などは、原版によるものでしょう。
さて、映画。

ドグラ・マグラ』は、日本三大奇書のひとつの同名小説の映画化。
文庫本で上下2巻。
映画が公開される少し前に、角川文庫で読みました。
内容は・・・さっぱり(すっかり忘れました)だが、米倉斉加年の表紙カバー絵は鮮烈に記憶している。

堂々めぐり(タイトルの意)して、事件が解決しているいるのかどうかよくわからない小説の内容を、映画は非常に判り易く、コンパクトにまとめています。

昭和初期の九大精神病棟で目覚めた青年(松田洋治)。
彼は一切の記憶を失っていたが、若林教授(室田日出男)が記憶をよみがえらせようと努力していた。
なぜなら、彼は、過去に起きた3つの事件の重要参考人であるからであり、若林教授の前には、正木教授(桂枝雀)が彼の記憶を引き出そうとしていた。
というのも、正木教授は、「祖先の記憶は、全身細胞により引き継がれる。彼は、中国で妻を殺し、その死体が腐るのを絵に描いていた呉青秀の子孫だからだ。過去の事件も、その細胞に刻まれた記憶が無意識に引き起こしたものだ」という理論を唱えていたからだ。
しかし、その正木教授はひと月前に自殺しており、その事件に件の青年が関係している・・・

というハナシ。

おっ、自分としては梗概を上手くまとめた(つもり)ぞ。
この事件は客観的に描くと、たぶん、それほど複雑な事件ではないのだろう。
しかし、事件をこんがらがして、堂々巡りたらしめてしまうのは、事件の当事者が記憶を喪い、その記憶を喪った本人から事件が語られるからである。
それを文章として認(したた)めたのが小説で、映像化したのが本作である。

この「文章(小説)」「映像(映画)」という性質が、ものごとを判りづらくするか、判り易くするかの分かれ目となり、映画では、どううしても「判り易く」なってしまう。

つまり「(記憶・頭脳が)混乱した語り手」という手法は小説でしか成立せず、映像という客観的描写が主となる映画では明晰となりやすい(もし、明晰でないならば、監督もしくは脚本家が明晰でない、もしくは、横槍が入って混乱してしまった、のどちらかである)。

なので、この映画は、かなり理路整然と、語り手(青年)の意識を描いている。
たしかに、台詞を続けながら、過去のシーンへ飛ぶとか、同じようなカット割りで他の時間軸へ移るとかの幻惑的表現を使っているけれども。

じゃあ、この映画、つまらないかといえば、否である。
その理路整然とした幻惑が面白い。
松田洋治、桂枝雀、室田日出男の怪演ぶりも愉しい。

ただ、公開当時のポスターやDVDパッケージに用いられたイラストは、かなりの減点。
妖しい魅力あるものの、残念ながら、事件の核心を描いているからである。
もしかしたら、映画を観ただけでは判らないひと向けに、親切で描いているのかもしれないけれど。

評価は★★★★(4つ)としておきます。



夢野久作の少女地獄』は小沼勝監督の日活ロマンポルノ作品。
同名の原作は未読。

昭和初期のカトリック系の名門女学院。
名家の娘・アイ子(飛鳥裕子)と、平凡な家庭の娘・歌江(小川亜佐美)は、密かにただらなぬ関係になっていた。
理由はわからない。
ただ、歌江は並はずれた体力と食欲から「火星さん」と学友のみならず教師からも蔑まれており、ふたりの関係は目を惹くものであった。
そんなある日、歌江は、牧師でもある校長により無理矢理犯され、身ごもってしまう。
また、アイ子はアイ子で、病弱な母親と横暴で身勝手な父親との関係に疑念を抱いており、自分の父親が校長であることに気づいてしまう。
結果、ふたりは、校長を含めて傍若無人な大人たちに復讐するのであった・・・

というハナシなんだけれど、この文書では全体を覆うインモラルな感じが出ていませんなぁ。

全編を覆うのは、インモラルな雰囲気なのだけれど、男女双方で、というよりは、男の力ずくでの背徳関係が主として描かれており、観ていて、陰鬱になってしまう。

嘲弄される女性、嬲(なぶ)られる女性、甚振(いたぶ)られる女性。
そういう雰囲気なのだ。

そんな少女(といっても、ふたりの女優さんは結構いい歳なんだけれど)が復讐するさまが、途中からヘンテコリンなホラー(安手の大蔵映画みたい)になってしまうのがいただけない。

そして、このホラーじみた復讐譚の果てに、突如として写し出される少女ふたりの全裸の絡み合い。
この、所を選ばない絡みのシーンには、とにかく驚いた。
自分の頭が(麻薬か何かで)ぶっ飛んだのか、それとも、フィルムが欠落したのかと思うほどの驚きだった。

そしてそして、荒涼たる岩山での最終エピソード。
事件の真相が語られるのだが、そんなことは他所へ置いておいてといわんばかりに、生き残って気が狂った校長を前にして、少女ふたりが純白の衣装で抱き合いながら焼身心中を遂げてしまう。

論理を超えたこの生理感覚。
たぶんにカルト的魅力はあるんだろうけれど、正直、ついていけない・・・

評価は★★☆(2つ半)としておきます。



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2016年映画鑑賞記録

新作:2016年度作品:45本
 外国映画30本(うちDVDなど 0本)
 日本映画15本(うちDVDなど 1本)

旧作:2016年以前の作品:57本
 外国映画46本(うち劇場 9本)
 日本映画11本(うち劇場 4本)←カウントアップ
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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
う〜ん、りゃんひささんの趣味全開の作品選択でしたな。
かばくん
2016/07/22 15:44

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