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zoom RSS 『家庭生活』ケン・ローチ監督(1971):時計じかけの英国生活 @特集上映

<<   作成日時 : 2016/12/25 16:56   >>

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川崎市市民ミュージアムで開催されたケン・ローチ監督の初期傑作集から1本鑑賞。
映画は1971年製作の『家庭生活』(原題「Family Life」)。
ケン・ローチ監督作品は、1991年の『リフ・ラフ』以降は日本では劇場公開されているが、それ以前の作品は、ソフト化されている『夜空に星のあるように』『ケス』以外はほとんど観ることができない。
今回はミュージアム所蔵の9本から5本を選んでの特集上映。
土日祝日だけの上映なので、意外と時間を捻出できず、この1本だけになってしまったのは残念。
さて、映画。

ベイドン家の次女ジャニス(サンディ・ラトクリフ)は、両親(ビル・ディーングレイス・ケイヴ)と、集合住宅に同居している。
自由に育てた姉は、両親の意に反した結婚をして家を出てしまったからか、両親は、ジャニスに対しては、ふたりの価値観を押し付けている。
戦後世代の例にもれず、自由に生きたいジャニスは、画家を目指している彼氏との間に、子をもうけてしまう。
出産を望まない両親は、ジャニスに中絶を強いるが、それをひとつの契機として、ジャニスは以前以上に両親に反抗をするようになってしまう。
それを見かねた両親は、両親はジャニスを病院に入れてしまう・・・

というハナシで、60年代後半の英国における新旧世代の価値観のぶつかりと、それによってスポイルされてしまう若者の生き方がリアルに描かれていきます。

ドキュメンタリーのような撮影シーンを含めて、描写がリアル。

スポイルされていくジャニスの姿に心痛を覚える。
戦前の価値観を持って、娘たちを管理・支配しようとしている両親は、自分たちに行動を疑問を持たない。
それが、ジャニスのスポイルに拍車をかける。

冒頭、長椅子治療の精神科に通っていたジャニスが、集合治療を受けるようになり、果てはショック療法・薬物療法によって生きる屍と化してしまう。

精神科や集合治療では、根本にあるのは、親子の価値観の相違だということを見抜いて、両親に対しても対話による治療をするのだが、両親はじぶんたちに対する治療だと気が付いていないがゆえに、ますます支配を強めてしまう。
恐ろしいのは、終盤のショック療法・薬物療法。
自らの気持ちを表現できなくなるところまでになってしまうジャニスを、両親は「従順だ」「良くなっている」と評価する。

この後半は、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』を思い出した。
同作品も、原作は1960年代前半に書かれたが、映画化は同じ1971年。
当時の英国的病変が、スタイルを変えて、映画になったといっても過言ではないだろう。

映画の中で、興味深い台詞があった。

ひとつは、集合治療で一緒に受けている女性患者の言。
「悪い子ね、と両親に言われて、素直にそれを認めると、いい子ね、と褒められる。認めないと、悪い子ね、と厳しくされる」

世代間での異なる価値観の押しつけには、絶えず、矛盾が含まれている。

もうひとつは、ショック療法・薬物療法の病院での、男性患者の言。
「従順にしていないと、自由を奪われる。だから、ボクは従順にしている」

これも矛盾を含んでいるが、真実だろう。
それゆえに恐ろしい。

終盤、ショック療法・薬物療法に入院しているジャニスを画家志望の青年が助けに来、ふたりはオートバイで逃げる。
最近のケン・ローチならば、少しの希望を持たせて、このあたりでエンドマークにするところだが、若いときの彼は厳しい。

背筋が凍りつくような結末をみせるこの映画は、初期傑作というのに相応しい。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

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2016年映画鑑賞記録

新作:2016年度作品:130本
 外国映画90本(うちDVDなど21本)
 日本映画40本(うちDVDなど 6本)

旧作:2016年以前の作品:104本
 外国映画83本(うち劇場19本)←カウントアップ
 日本映画21本(うち劇場 7本)
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