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zoom RSS 『FAKE』:真実より心実(本当かどうかはさておき、哀しみが撮りたい) @名画座

<<   作成日時 : 2017/03/24 22:25   >>

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『「A」』『A2』の森達也監督の劇場用ドキュメンタリー映画『FAKE』、名画座で鑑賞しました。
まぁ、いっちゃえば、今回の取材対象のひとが、聴覚障害だか、かれが作曲したかだかってことには、ほとんど関心がなかったので、森達也監督がどうしてこんな題材に興味があったのか、そこんところがいちばんの関心でした。
さて、映画。

重度の聴覚障害(ありていにいえば聞こえない)を患っていた(と本人がいう)作曲家の佐村河内守氏の曲は、世間の知るところとなり、それを訝ったひとたちが探りを入れると、さもありなん、ゴーストライターの新垣氏が書いた曲だった、ということが報道され、結局のところ、佐村河内はバッシングされてしまう。
「本当なのかは置いておき」、そんな境遇の佐村河内の哀しみが撮りたいと申し出た森達也であった・・・

という話で、映画的には、本当かどうかはさておき、被写体を撮ることに専念している。

そこんところが、非常に興味深く、事実が「真実かどうか」なんて、たぶん撮る側は興味がない。
マスメディア的な興味でいうと、いちばん大事なのは「真実かどうか(もうちょっと譲っていえば、事実かどうか)」なんだけれど、森達也にはそんなことはどうでもよろしい。

それは、撮るはじめから言っている。
佐村河内氏の前で「あなたの怒りはどうであれ、あなたの哀しみが撮りたい」と。
つまり、「怒り」であれ「哀しみ」であれ、真実、事実の「真」も「事」もどうでもいいわけだ。
もうひとつ付け加えれば、「撮りたい」という立場であって、同情する・同調するという立場ではない、ということだ。

そして、重要なのは、森氏がいう言葉の中で繰り返される「あなた」だ。
つまり、あなたが撮れればいいのだ。

だが、そんな簡単に「あなた」と呼ばれる対象なんて撮れない。

そこが、ドキュメンタリスト・森ならではなのだろう。
その答えは最後の最後にあり、撮ってきた佐村河内氏に言う言葉にある。

(ぼくは隠さずあなたに接してきました。佐村河内さん)、ぼくに言わなかったこと、隠していることはありませんか、と。

佐村河内氏は、しばし沈黙し、言葉を発する前に映画は終わる。
つまり、撮る側はわだかまりはない。

しかし、撮られている側にはわだかまりがある(かもしれない)。

意地悪く言ったような言葉だけれど、そう見えるのは観ている側のせいかもしれない。

そりゃそうだ。
譜面も読めない男が作曲したといっても誰が信じる?
でも、譜面が読めなきゃ音楽がわからないと思っているのは、正しいのか。

トム・クルーズは失読症だが、それだからといって彼の台詞廻しは非難されない。
美空ひばりも、楽譜は読めなかったときく。

だったら、音そのものが聞こえないのでは佐村河内氏にとって、(映画終盤で示される程度の)重層的ではあるが複雑でもない曲をイメージすることは可能だったのだろう。
そう、思いたいし、たぶん、撮っている森氏もそう思っている。
(個人的は、重層的に荘厳な感じもするので、いい曲にも聞こえる)

じゃあ、最後に森氏がかける言葉に言いよどむ佐村河内氏の態度はどうなの?ってことになるのかもしれないが、まぁ、反省というか後悔だね。

自分でも曲が作れることを、改めて(かどうかは不明だが)わかった上で、それを言葉に出すかどうか。
なにせ、共感はしても、呉越同舟のように寄り添うことはしない森氏なのだから、まぁ、ここで終わらすのが、彼の映画らしいともいえましょう。

森氏が観た真実だか事実だかは、このとおりなのだろう。

評価は★★★★(4つ)です。

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2017年映画鑑賞記録

新作:2017年度作品:23本
 外国映画19本(うちDVDなど 3本)
 日本映画 4本(うちDVDなど 0本)

旧作:2017年以前の作品:29本
 外国映画24本(うち劇場鑑賞 6本)
 日本映画 5本(うち劇場鑑賞 1本)←カウントアップ
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