『プール』:タイ版『かもめ食堂』ではない家族と死生観

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小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮の出演陣なので、どうしたって『かもめ食堂』『めがね』の路線かしらんと思うけれど(実際そう思って観にいったけれど)、観終わった後の感想は「狙いは違うなぁ」ということです。

たしかに、出演陣もさることながら、異国情緒、ゆったりとした演出、人と人との距離感を微妙に描いていくあたりは『かもめ食堂』『めがね』に似ているのだけれど、同じ女性監督として大森美香監督が狙ったのは「家族」「死生観」ではありますまいか。

先の2作品では描かれなかった家族の距離感が描かれています。
娘から見れば「身勝手」としか捉えられない母親の海外への出奔。

「自由がいいじゃない。好きなことをする方が絶対いいじゃない」とは母親・小林聡美の弁。
「そんなの勝手じゃない。残されたわたしは、グレて不良になっていたっておかしくないんだよ」と娘・伽奈の弁。
「そんなことなるわけないじゃん、判ってるんだから」と母親。
「でも、心配してほしかったんだから」と娘。
「そうかぁ・・・かまって欲しかったのかぁ」と母親。

相手のことを慮っているのはいるが、やっぱり、口に出して、言葉にしないと伝わらないもどかしさ。
言葉にしてしまえば、多少ことば足らずでも判ってしまう、その距離感。
監督は、この距離感を描きたかったのだと思う。

この家族の距離感は、タイの少年・ビーを入れることで一層鮮明にしている。
父親は居ず、母親とも離れ離れになってしまったビー。
加瀬亮の家で暮らし、彼が、居なくなった母親を役所を通して探している。
ビーの母親と名乗る女性が現れるが、ビーには、母親でないことが一目で判ってしまう。
当然といえば当然なのだけれど。

「云わなくても判る」。そうなんだよね。

でも、「想い」は、やっぱり見えた方がいい。

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それで、大森監督は仕掛ける。
タイの伝統儀式コムローイを用いて、「想い」として見える形で描いている。
コムローイは、竹の骨に白い紙を被せて、大きな帽子のような形をこしらえて、その中に蝋燭などの炎を入れて空中に解き放つ、いわば「精霊流し」の空中版。
そのコムローイを、家族と擬似家族の面々が、それぞれの想い・願いを込めて、夜空に解き放っていく。
天までとどけ。

そして、そのコムローイ。当然にして、ひとの魂の象徴でもある。
みんなの想いを乗せて飛んだそのひとは、プールサイドでひっそりと「さよなら」を告げる。

この後のラストシーンは、はっとさせられる。

娘を空港に送るべく自動車に乗った家族・擬似家族たち。
空港へ向かう道路。
そのの両脇を、オレンジ色の袈裟を着たタイの僧侶たちが列を成して歩いている。
靄が立ち込める道路。
靄につつまれ、自動車はスクリーンの向こうへ消えていく。

「さよなら」を告げたひとも、告げられたひとたちも、静かに、そして安らかに、消えていく。
ここいらあたりの死生観は『かもめ食堂』『めがね』にはない味わいで、とてもとても羨ましい想いがしました。

だから涅槃仏のあるチェンマイが舞台なのね、と納得もしました。

オマケも込みで★4つとしておきます。

<追記>
大森美香監督の前作『ネコナデ』も観たくなりました。

↓Myムービーのレビュー&採点はコチラから↓
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id333868/rid74/p0/s0/c0/

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小林聡美のギターも聴きどころ。

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