『夢売るふたり』: 虚実・主客が入れ替わりに見応えあり @ロードショウ・シネコン

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西川美和監督の最新作。
この監督の作品は、いつも愉しみにしています。
人間の業とでもいいましょうか。
よせばいいのに、どうしようもなく、どうにもならなく、というような言葉が似合う映画たちを送り続けてくれているからです。

この『夢売るふたり』もそんな映画。
これまで作品と違っているのは、いつもならもっと曖昧に描くエンディングが、今回は観客に疑問を残すようなことのないエンディングを描いているあたりでしょうか。
それでも、ふたりの人生がどのように続いていくのか、には興味を掻き立てられますけど。

さて、作品の内容。

開店5年目の小料理屋を営む夫婦。
固定客の付き、繁盛していますが、好事魔多し、繁盛しているが故に手が回らなくなり、失火してしまいます。

夫は、もうどうしようもなくなり、あきらめの毎日。
自暴自棄とでも申しましょうか。

対して妻は街の寂れたラーメン屋でバイトをして日銭を稼ぐ。
地に足がついたとでも申しましょうか。

ある日、自暴自棄の夫が、偶然、かつての店の常連の女性と出会い、一夜を共にします。
女も、不倫相手が事故に会い、手切れ金を渡され、自暴自棄になっており、それが共感しあったわけです。
女の自棄が高じて、手切れ金を、小料理屋の主人に渡します。

図らずも、夫のだめだめさ加減を正直にさらけ出すことが、他の女の同情や共感を得ることに妻は気付きます。
そして、ふたりは、世のさびしいが虚の世界にあこがれを持っている女性たちをターゲットにして、逆・美人局をして、新しい店の資金にすることを思いつき、実行に移していきます・・・・


この映画のおもしろいところはここから。

虚の世界を女性をターゲットとしていたのが、徐々に実の世界の女性をターゲットとすることで、夫婦間の関係が変化していきます。
夫婦の間がらも、妻が主体だったものが、夫が主体へと変化していきます。

ここいらあたりは、実際に観て、楽しんでもらうほかはないでしょう。

ただし、残念なのは、画竜点睛を欠くとでも申しましょうか、夫が相手側の生活にホントウに入り込んでしまうキッカケを、短いシーンでパチンと撮って欲しかったこと。
それから、後半、ちょっとリズムというか、展開が乱れてしまいます。
ああいう落とし前でよかったのかどうか。

夫婦ともども、巻き込まれた感が残る大団円は、ちょっと違うのではないかと感じました。

とはいえ、見応えは十分、評価は★4つを進呈します。

 



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2012年映画鑑賞記録

 新作:2012年度作品
  外国映画41本(うちDVD、Webなどスクリーン以外16本)
  日本映画14本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 3本)←カウントアップ

 旧作:2012年以前の作品
  外国映画24本(うち劇場 0本)
  日本映画 7本(うち劇場 2本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2012年09月23日 17:17
おっしゃる通り、実の世界の女を騙してはいけないですよね。というか、騙しきれるほど、この夫婦は悪い人間ではなかったということでしょうか。ウェイトリフティングの選手の実に係ることから夫婦二人に変化が生じていきます。夫は自分のしていることへの嫌気を覚え、妻は自分のしていることの空虚さを感じていきます。夫は都合よく男不在の家庭へと逃げ込みますが、残された妻には逃避先もなく・・・。ラストの事件があれでいいのかは少し疑問ですが、まあ夫の贖罪の意味を表したかったのかなと。妻が最初に受け取った(そもそも、詐欺を思いつかせたきっかけの)お金を返すところは彼女の決意の表れですね。
雪の舞う市場で働く妻の心は、最初のように実の世界の中で夫に寄り添おうとしていて、塀の中で働きながらふと窓の外を見上げる夫にも、それが伝わってほしいなと思いました。

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