『最終目的地』: 文学と映画の至福の出逢いを堪能 @ロードショウ・単館系

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『眺めのいい部屋』『日の名残り』のジェイムズ・アイヴォリー監督の現在のところの最新作。
もう監督も高齢なので、このあと、作品を撮れるかどうか、心配。
また、名匠アイヴォリー監督作品ながら、製作から数年経っての日本公開なので、いまさらながら日本での洋画公開の厳しさを感じざるを得ない。
そんなことはさておき、映画『最終目的地』のことを。

アメリカの大学で文学の講師を務めるイラン人男性。
彼が興味を持ち、研究の対象としているのが、生涯に『ゴンドラ』という作品を残しただけのユダヤ人作家のこと。
作家はウルグアイに住み、あるとき自殺をしてしまった。
ウルグアイには、残された血縁・縁者が暮らしている。
すなわち、作家の妻、作家の愛人と幼い娘。
さらに、同性愛者である作家の兄と、彼の情人である日本人の男性。

イラン人の大学講師は、作家の伝記を書く許可をもらうべく、ウルグアイのかの地へと向かう。
それまで、死んだ作家に囚われていたのか、ウルグアイの土地に囚われていたのか、平穏に暮らしていた作家の血縁・縁者たちがイラン人大学講師の訪れを機に、囚われていた事柄から開放されていく・・・

ストーリーを簡潔に記せば、そういうこと。

このストーリーからも判るように、この映画は、作るのがかなり難しい。

物語の中心である作家が既に死んでおり不在であるからで、その存在しないものに囚われているひとびとが変わっていくさまを描くのは、更に難しいといえる。
しかし、名匠アイヴォリー監督は、不在の中心点に近寄らずに、周囲のひとびとの心の動きと行動を巧みに描いており、飽きることはない。
ただし描くトーンが最後まで暗いので(たぶん、名パートナーの製作者がこの作品を手がける直前に死去したことが大きいのだと思うのだが)、ラストで途方もない開放感を味わうべきところが味わえず、少々物足りないともいえる。

出演者たちも、作家の妻のローラ・リニー、愛人のシャルロット・ゲンズブール、作家の兄のアンソニー・ホプキンス、彼の情人の真田広之と魅力的なキャストをそろえているが、いかんせん、狂言回しの役どころの主役のイラン人大学講師に魅力がないのが減点。

脚本で、少々物足りない・判りづらいのは、イラン人大学講師がユダヤ人作家に興味を持ったその理由が説明されていない点と、作家が残したもう一遍の小説のその後の行方が明確でないあたり。
とはいえ、文学作品では、読み手の読解力不足で不明な点があるのはしばしばなので、もしかしたら、先の2点も映画をよく読みこめば描かれているのかもしれません。

文芸作品の大型映画化では、『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』のデイヴィッド・リーン監督が最高峰だと思うのですが、このジェイムズ・アイヴォリー監督も外連味(けれんみ)を抑えた文芸作品の名手として、並べてしかるべし、という監督でしょう。

評価は★4つです。

 



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2012年映画鑑賞記録

 新作:2012年度作品
  外国映画46本(うちDVD、Webなどスクリーン以外19本)←カウントアップ
  日本映画17本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 5本)

 旧作:2012年以前の作品
  外国映画25本(うち劇場 0本)
  日本映画 8本(うち劇場 2本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2012年11月12日 10:58
さんざん迷って、結局観に行ってすごくよかった作品です。久々に文芸ものの感触を味わいました。
キャストもすごくよかったし。真田広之もこんなにセクシーな人でしたっけ。ただ、りゃんひささんもおっしゃっているように、イラン人の男性の
魅力のなさはかなりの減点ですね。
機会があれば原作も読んでみたいと思いました。

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