『愛、アムール』: ふたりでスローダンスを。そして・・・ @ロードショウ・シネコン

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2012年度米国アカデミー賞外国語映画賞受賞の『愛、アムール』。
前作『白いリボン』でも圧倒されたミヒャエル・ハネケ監督作品の最新作。
公開初日に観に出かけましたが、客席はガラガラ。
シネコンのかなり大きいスクリーンなので、余計に空席が目立っていました。
まあ、いくらアカデミー賞受賞といっても、はじめから辛そうなことが判っている映画を選択するひとは少ないだろうし、これはしかたないこと。
さて、映画。

愛しあい、ともに長年連れ添った夫婦の行きつく先の死を、「愛」のキーワードで、削ぎ落として削ぎ落として描いています。

サイレントでスタッフ・キャストが示されるオープニング・タイトル。
ハネケ監督のいつものパターン。
これが、端からこの映画の厳しさを示しているよう。


著名なピアニストで、何人ものピアニストを排出してきた老齢の妻。
それがある日、行動が停まってしまう。
脳梗塞のようである。

病院から戻った妻は、夫に、「決して病院には戻さないで」と懇願する。
夫は、妻に寄り添い、付き添い、介護を始める・・・


これまで観てきたような映画だと、このあとに続くのは、老老介護の大変さだとか日常描写を丹念に描いたりするのだろうが、ハネケ監督は、そのような生活の中で起こるであろう出来事は描かきません。
描くのは、あくまで夫婦で寄り添う姿です。

まだ妻の症状が軽いときに、ハネケ監督が映すのは、妻をベッドから起こし、車椅子に乗せる、その様子をまるで、静かな静かでゆったりとふたりのスローダンスのように映すのです。
また、車椅子から妻を立ち上げて、ふたりで歩く練習をする、それも尺をかけ、ゆっくりゆっくりとしたダンスのように。
妻の右腕は夫の肩先にかけられ、歩く練習の最後は左90度にターンをすることからも判ります。

こののち、妻は二度目の発作を起こして、病状が急激に悪くなっていくのですが、その発作のようすなどは描かれていません。


終盤、もうほとんど動けなくなった妻は、点滴を拒み、その上、夫から口に運ばれる水をも飲もうとしなくなります。
これは妻として、覚悟の意志表示なのです。
夫は悟ったわけですが、そこははっきりと描かれていないか、見逃したか・・・

続く場面は、これまでほかの映画でもあったような夫が妻の枕元で、自分の幼い日のことを語るシーンです。
ああ、もう妻の余命はほとんどないのだろう、と思って観ていましたが・・・
そして、そののち夫の行動。

これを遣る瀬無い、遣り切れないとみるかどうか。
愛しあい、ともに長年連れ添った夫婦の覚悟を、愛とみるかどうか。

ラスト直前の、夫が妻に促されて外出するシーン。
それと、ラストの、残された娘が、だれもいなくなってガランとした部屋に佇むシーン。

周囲からみれば遣り切れなく遣る瀬無いが、夫婦ふたりにとっては充実した愛の最後なのでしょう。

評価としては、★4つ半にしておきます。

<追記>
エマニュエル・リヴァとジャン=ルイ・トランティニャンの名優ふたりが文句なく素晴らしいです。

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2013年映画鑑賞記録

 新作:2013年度作品
  外国映画 6本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 2本)←カウントアップ
  日本映画 1本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)

 旧作:2013年以前の作品
  外国映画15本(うち劇場 1本)
  日本映画 1本(うち劇場 0本)
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  • No.342 愛、アムール

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