『眠れる美女』:現代イタリアそのものを描こうとする野心作 @ロードショウ・単館系

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イタリアで実際に起きた安楽死・尊厳死を巡っての社会事件を題材に、マルコ・ベロッキオ監督が3つのエピソードを展開する『眠れる美女』、公開からしばらく経てからの鑑賞です。
映画の前にイタリア近現代史を専門にする女性教授によるミニ・トークがあり、ここで扱われているエルアーナ・エングラーロという女性の安楽死・尊厳死問題は、映画に描かれているとおり凄まじい社会問題になったとのこと。
そして、その問題はいまだ解決に至っていないということ、だそうだ。
映画のレビューに入る前に、そのときのトークからまとめてみると・・・

エルアーナ・エングラーロという女性が昏睡状態にあり、その両親が、当時のイタリア国内法の範囲で、安楽死・尊厳死の手続きを取ろうとした。
しかしながら、安楽死・尊厳死に係る法律は整備されておらず、殺人にあたるとして認めることは出来ずとして、却下された。
その裁判は最高裁の審議にまで上ったが、最高裁で差し戻しされた。
一方、国会では、政府与党の保守党が、安楽死・尊厳死を認めない法案(延命措置の積極的な停止することを禁じる法律)を提出して、審議に入っている。
カトリックの国であるイタリアでは、命は神によって定められたものであり、その与奪をひとが決めることは神の教えに反する、という考えが根強い。

さて、映画。

3つのエピソードが展開されるが、それらのエピソードはほとんど重なるところなく進行し、説明がないまま始まるので、冒頭30分ほどは何が起こっているのかがよく判らない。

ひとつは、保守党上院議員の父と娘のエピソード。
父親は党が提出した法案の可否投票を逡巡している。
逡巡している理由は、(映画が進むうちに明らかになるが、)末期癌で苦しむ妻の延命装置を停止させた過去があるからだ。
一方、娘は友人たちと、エルアーナが移送された街に、カトリック系の安楽死・尊厳死反対の抗議集会に出かける。
そこで、対立グループに属する青年と知り合う。
彼には、情緒障害を抱えた弟がいるが、その弟の行動を通じて、情が深くなっていく・・・

ふたつめは、薬物依存症の女性と青年医師のエピソード。
女性は、住むところもなく、教会で寝泊まりしている。
教会に捧げられた金品を盗んだり、ひとから金をせびったり、だまし取ったりして生きている。
彼女は過去何度も自殺未遂を繰り返して、生きる希望を失くしている。
今回も助けてくれた青年医師の眼前で手首をかっ斬り、自殺を図った。
意識を取り戻しても、何度も、病室の窓から投身自殺を図ろうとする・・・・

みっつめは、元女優のエピソード。
彼女には、演劇を志す息子と、延命装置に繋がれて植物状態の娘がいる。
彼女は、毎日、教会で娘の恢復を神に願うが、一向にその気配はなない。
息子は、そんな母を観て、母親こそが死んだ状態だと感じており、妹の延命装置を外してしまう・・・

これらのエピソードが並行に進んでいきます。

その中で描かれているのは、まさにイタリア。
政治も、宗教も、市井の暮らしも含めて。
それが、マルコ・ベロッキオ監督が巨匠と呼ばれる所以でしょう。

そして、監督は3つのエピソードを、それぞれ異なる形で終結させます。

ひとつめ、ふたつめのエピソードは、生きる希望を感じさせる終結をみせてくれます
みっつめのエピソードは、強い決断の意志をみせます。

みっつめのエピソードの描写は少々判りにくいので補足をすると、
元女優は、2月9日のその日に家中の鏡を外させます。
これはこれから行いことを見られたくない、写して残したくないと思いからでしょう。
そして、これから行うこと(こと、が描かれないので行ったこと、かも)は、娘の傍のカウチで寝込む彼女が観る夢。
それは、シェイクスピアの『マクベス』の一節。
マクベス夫人の台詞、「この手を・・・いくら洗っても・・・落ちない・・・血が落ちない・・・」

さすが、巨匠と呼ばれる監督の映画と感じました。
また、映画館の暗闇の中で観る映画です。
自宅のDVDでは、このズンとくる重さ厚さは感じられない、とも思いました。

評価としては★4つとしておきます。

<追記>
画面の下方に2月○日と日付が示されます。
これは、その日が2月9日だと事件の顛末を知っていることが前提として入れられているようです。
それだけ、この事件はイタリアでは広く知られている、ということですね。


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2013年映画鑑賞記録

 新作:2013年度作品
  外国映画33本(うちDVD、Webなどスクリーン以外16本)←カウントアップ
  日本映画19本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 4本)

 旧作:2013年以前の作品
  外国映画47本(うち劇場 2本)
  日本映画 9本(うち劇場 1本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2013年11月09日 01:49
この監督、実際に起きた事件を基にしていろいろ映画を撮っている人のようですね。私にとって感情に訴えるというよりも、頭脳に訴える作品でした。ヨーロッパの宗教観と、監督の気骨により、「終の信託」のように気色の悪い作品にならなかった点はさすがです。

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