『オリエント急行殺人事件』ケネス・ブラナー版:映像は豪華だが、ミステリーとしては中途半端か

画像

アガサ・クリスティの超有名ミステリー小説の映画化『オリエント急行殺人事件』、ロードショウで鑑賞しました。
原作小説も読んでいるし、1974年のシドニー・ルメット監督&ポワロ=アルバート・フィニー版も観てるし、テレビシリーズのデヴィッド・スーシェ版も観ています。
なので、犯人も当然知ってるし・・・
というか、この映画を観に来る観客の大半は、犯人は知っていると思うのですが。
さて、映画。

英国で発生した事件の解決依頼を受けたポワロ(ケネス・ブラナー)は、イスタンブールの休暇を切り上げ、オリエント急行でロンドンへ向かうことにした。
冬のこの時期、普段は空いているはずの列車は満室だった。
が、発車間近になっても現れない乗客がいたので、一等車にのることが出来たポワロ。
その昼、食堂車でラチェットと名乗る男(ジョニー・デップ)から、脅迫状が届いたので身辺警護をしてほしいと依頼されたポワロだったが、男の人相が気に喰わないことを理由に断った。
その夜、件の男が何者かによって刺殺されてしまう。
さらに、運悪く、猛吹雪によって、列車は高架橋の上で立ち往生してしまう・・・

というお馴染みの物語。

超有名なミステリー故、観客の大半も犯人は知っているはず。
なので、再映画化はかなり難しい。

1974年のシドニー・ルメット監督版では、概ね原作に忠実に作られていた。
というのも、原作もいまほど有名ではなく(といってもかなり有名)、さらに初めての映画化だったので、豪華なキャストによる原作どおりの「謎解きミステリー」としての愉しみを味わってもらおうという趣向でした。
2010年に作られたデヴィッド・スーシェ(=ポワロ)のテレビシリーズの一篇『オリエント急行の殺人』では、事件の真相を知ったポワロが正義を貫くかどうかと苦悩する側面に焦点が当てられていました。

という後の今回、うーむ、どうも中途半端な印象は免れない。

ケネス・ブラナー演じるポワロは、これまでのポワロ像(ピーター・ユスティノフも含めて)と大きく異なり、スタイリッシュという雰囲気。
つまり、名探偵というよりも「大人のヒーロー」を目指した感が強い。
なので、停車しているとはいえ列車の屋根に登ったり、高架橋の橋桁での追いかけっこをやったりと、これまで以上にアクティブ。
こういうポワロがみたかった・・・という想いは全然ない。

また、ミステリー的にみると、事件が前後に張られた伏線・ミスリードがあっさりと判明して、肩透かし気味。
ミステリー要素も食い足りない。

ま、どうも映画の狙いはそこいらあたりにはなかったよう。

見どころのひとつは、65ミリフィルムで撮影されたという映像(エンドクレジットでみる限り、撮影後、編集前にデジタルスキャンされたもよう)。
雪深い風景での深みのある映像には満足。

もうひとつは、過去に起こった事件の被害者たちと遺された者たちの深い悲しみに焦点を当てること。
最後の晩餐のように長いテーブルの向こう側に並んで座った容疑者たちを前にしての謎解きシーンでの、殊更までにセンチメンタルな音楽がその証左。
こういう演出は、感情に流されるばかりで、個人的には好みではありません。
スーシェ版では、ここシーンでは、ポワロが手にしている十字架を効果的に用いて、正義を通すかどうかの苦悩、そして、そもそも正義とは何かを苦悩するポワロが描かれていましたので。

さらに付け加えるならば、豪華な俳優陣、上手く活かされていたかしらん。
というか、豪華さからいうと、やはり1974年版の方が上のような・・・

評価は★★★(3つ)としておきます。

<追記>
乗客たちの配役を1974年版しておきます。
( )内が1974年版。
少々役名が変更になっているもののあります。

ラチェット:ジョニー・デップ(リチャード・ウィドマーク)
ハバード夫人:ミシェル・ファイファー(ローレン・バコール)
ドラゴミロフ公爵夫人:ジュディ・デンチ(ウェンディ・ヒラー)
メアリ・デブナム:デイジー・リドリー(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)
アーバスノット:レスリー・オドム・Jr(ショーン・コネリー)
ルドルフ・アンドレニ伯爵:セルゲイ・ポルーニン(マイケル・ヨーク)
エレナ・アンドレニ伯爵夫人:ルーシー・ボーイントン(ジャクリーン・ビセット)
ヘクター・マックイーン:ジョシュ・ギャッド(アンソニー・パーキンス)
ヒルデガルデ・シュミット:オリヴィア・コールマン(レイチェル・ロバーツ)
ピラール・エストラバドス:ペネロペ・クルス(グレタ・オルソン:イングリッド・バーグマン)
エドワード・マスターマン:デレク・ジャコビ(エドワード・ベドウズ:ジョン・ギールグッド)
ゲアハルト・ハードマン:ウィレム・デフォー(サイラス・ハードマン:コリン・ブレイクリー)
ピエール・ミシェル車掌:マーワン・ケンザリ(ジャン=ピエール・カッセル)

------------------
2017年映画鑑賞記録

新作:2017年度作品:101本
 外国映画75本(うちDVDなど22本)←カウントアップ
 日本映画26本(うちDVDなど 3本)

旧作:2017年以前の作品:67本
 外国映画59本(うち劇場鑑賞13本)
 日本映画 8本(うち劇場鑑賞 3本)
------------------

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

ぷ~太郎
2018年03月29日 16:53
同意見です。1974年版の方がどうみても豪華ですよね。今回はガッカリでした。ポアロである必要性が全くないのですから。
りゃんひさ
2018年03月30日 00:27
ぷ~太郎さん、コメントありがとうございました。
ケネス・ブラナーはエマ・トンプソンと共演した『愛と死の間で』でもそうでしたが、ミステリーは向いていないように感じました。
じゃむとまるこ
2020年05月26日 11:42
こちらのオリエント急行~も豪華キャストでしたが、いまいちでした。
脚本も今一つだったような、あまり記憶にないのです💦
りゃんひさ
2020年05月26日 22:02
>じゃむとまるこさん

こちらのオリエント急行は、なんだか観たあとすぐに忘れる類の作品でした。なお、ケネス・ブラナー=ポワロで『ナイルに死す』も映画されて、公開待ちだったのですが、このコロナ禍でいつ公開になるか・・・

この記事へのトラックバック