『火葬人』: うなされること必至の悪夢的映画 @特別上映

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チェコスロバキア建国100周年を記念しての月例上映会へ出かけました。
今回の上映作品は1968年製作、ユライ・ヘルツ監督『火葬人』。
3年ほど前にオフシアター上映され、昨年秋にイメージフォーラムでのチェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ特集上映で数回だけ上映された作品。
日本ではDVD化されておらず、鑑賞する機会は少ないです。
さて、映画。

1930年代の話。
葬儀場を営んでいる中年男性のカレル・コップフルキングル。
17年前に妻と結婚し、娘と息子のふたりの子どもに恵まれている。
ナチスドイツの勢力が強くなってくる中、カレルの心に少しずつ邪気(というか妄想というか)が湧き上がってくる。
それというのも、チェコ人であるが彼の血にはドイツ人の血が流れているが、妻の母親はユダヤ人・・・

といったところから始まる物語で、冒頭、家族そろっての動物園のシーンから、豹の檻の前での短いショットの積み重ねで、観客を不安にさせていきます。

そして、メインタイトルのタイトルバック。
シュヴァンクマイエルのような、切り紙アニメ。
ひとの顔が半分に割れ、スタッフ・キャストの名前が現れ、死体をイメージした裸体が積み重なって・・・と、まぁ、ここまでの5分ぐらいで逃げ出したくなる観客もいるのではありますまいか。

カレルの営む葬儀場は、大きな会葬者用のホールがあり、そこでは軽快な音楽なども流れ、さらに会葬者たちがダンスに興じることもできる。
そして、火葬装置は地下にあり、棺桶が並び、75分で死者を灰にすることができる。

灰は、人間の元の姿。死者は焼かれることで清められる・・・とカレルは心から信じ、「チベットの死者の書」に傾倒している。

なんだか、もう、不気味不気味なのだけれど、そうしているうちにナチスドイツの例の政策が彼の心に入り込んでくる。
ユダヤ人の汚れた血を清めなければ・・・と。

まずは妻を、そして息子を、娘を、そして最後には・・・ナチスドイツが新たに建設する巨大なガス焼却施設の所長に収まる。

この後半は悪夢のような展開で、カレルは妄念に憑りつかれていき、自身の分身を見るのであるが、そのショットは魚眼レンズを通したように歪んでいる。

第二次世界大戦前期に一旦はナチスドイツに飲み込まれてしまったチェコの国。
そんな自国を、悪夢のような映画としてユライ・ヘルツ監督は観客の前に提示した。
初公開時、上映禁止処分になったというのも、むべなるかな。

書き忘れたが、中盤までの、エピソードとエピソードのつなぎがまったくもって素晴らしい。
エピソードのおしまいのショットが次のエピソードの始まりのカットが切れ目なく繋がっており(ヒッチコック監督の『ロープ』のような感じ)で、それが悪夢のなかにいるような感じを強めています。

主役のルドルフ・フルシーンスキーは怪演。

評価は★★★★(4つ)です。

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2018年映画鑑賞記録

新作:2018年度作品:73本
 外国映画58本(うちDVDなど 7本)
 日本映画15本(うちDVDなど 2本)

旧作:2018年以前の作品:71本
 外国映画62本(うち劇場鑑賞15本)←カウントアップ
 日本映画 9本(うち劇場鑑賞 3本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2018年11月19日 15:19
う~ん、りゃんひささん好みの作品だったようですね。こういう悪夢的映画より今やっている「ヴェノム」はいかがでしょうか?
2018年11月19日 21:53
ぷ~太郎さん、コメントありがとうございます。
はい、この手の映画は好みなのです。
「ヴェノム」は、さて・・・?

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