『ルシアンの青春』:誰もがナチスに反旗を翻していたわけではない、苦い青春譚 @DVD

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ルイ・マル監督の1973年作品『ルシアンの青春』、買い置きDVDで鑑賞しました。
ルイ・マル監督といえば、はじめて出逢ったのはモーリス・ロネ主演の『鬼火』。
その後、『プリティ・ベビー』や旧作『死刑台のエレベーター』『地下鉄のザジ』『アラモベイ』などを観、一筋縄でいかない、多彩なフィルモグラフィなのに、どこか近寄りがたい感じがする監督でした。
その思いは現在もかわらないのですが、それでも過去作品を観たいと思い、いくつかの作品はDVD購入しています。
さて、映画。

1944年の南フランスのとある村。
17歳の青年ルシアン(ピエール・ブレーズ)の父は戦争で捕虜となっており、母は村の有力者の支援を受けて暮らしている。
支援には、肉体関係は付き物で、そんな際にはルシアンは邪魔者扱いされている。
そんなある日、ルシアンはレジスタンス活動を首謀している小学校の教師に、自分もレジスタンスとして活動したい旨を告げるが、あっさりと断られてしまう。
その夜、村から働き先のある町に帰る途中、パンクした自転車を押していたルシアンは、とあるホテルの前で小休止したところ、慌ただしくしていた建物から出てきた男に捕まり、内部に連れ込まれてしまう。
喧騒のなかで高揚したルシアンは、小学校の教師がその地域でのレジスタンスの首魁であることを、考えもなしに話してしまう・・・

というところから始まる物語で、そのホテルはフランス人の親ナチス組織(ドイツ警察と映画では表現されている)の居所であり、ルシアンの何気ない告発が彼らに信頼され、彼らの仲間になっていく・・・と展開する。
さらに、ルシアンは組織の有力者を通じて知り合ったユダヤ人仕立屋オルン(オルガー・ローウェンアドラー)一家と懇ろになり、オルンの美しい娘フランス(オーロール・クレマン)に恋心を抱くようになり、オルン一家に便宜を図ったりもするようになる。

この映画の見どころは、フランス人青年が知らず知らずにナチス側に加担し、さらに彼によって運命を左右されるオルン一家の行く末にあるのだけれど、ルイ・マル監督はそんな物語をメロドラマ的・エンタテインメント的には見せない。
かなり淡々と・・・といった印象である。

が、そのあまりドラマチックに撮らない演出が、かえって物語に凄味を与えている。

それが際立つのは、エンディング近く。
オルンも捕まり、遺されたフランスと祖母を捕まえるべく、ドイツ警察に同行したルシアンは、土壇場で組織を裏切り、フランスと祖母を連れてスペインへの脱出を図る。
追っ手が来ないと思った一行は、とある空き地で骨を休めるが、しばしの休憩とばかりに眠っているルシアンに対して、恨み骨髄とばかりにフランスは頭上から石を振おうとするが思いとどまる、というショットがある。

このショットが、何気ないのだけれど、怖い。
石は落とされない。
どうにもこうにも、こうしたいがそうもできない彼女の気持ちが、ワンカットでわかる。

ま、ルシアンにもフランスにも共感できない、気持ちなんてさっぱりわからないというひとも多いかもしれないし、わからなくても当然のような現代。

1973年にルイ・マル監督がこの映画を撮ったのには、どんな意思があったのか。
よくはわからないが、終戦以降、レジスタンスを英雄的に扱った映画も多く、祖国フランスは常にナチスドイツに対抗していたわけではない、そんな英雄ばかりではなかった・・・と、祖国フランスを愛して撮ったのだろう。
そう思う。

歴史は、その後に捏造・改変されやすく、それは意図していなくてもそうなりかねない。

そんなことも含めて(含めなくても)、傑作だと思いました。

評価は★★★★★(5つ)です。
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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品:29本
 外国映画28本(うちDVDなど 3本)
 日本映画 1本(うちDVDなど 0本)

旧作:2019年以前の作品:44本
 外国映画34本(うち劇場鑑賞 8本)←カウントアップ
 日本映画10本(うち劇場鑑賞 2本)
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