『幸福なラザロ』:ただのイタリア農村リアリスモ映画ではない寓話映画 @ロードショウ・単館系
4月中旬から公開の『幸福なラザロ』、ロードショウで鑑賞しました。
ファーストランは5月末で終了のようで、この後、全国で公開されます。
さて、映画。
20世紀末と思われるイタリアの小さな村。
外界との交渉もなく、公爵夫人のもと、タバコ栽培を行っている。
ある日、公爵夫人と息子のタンクレディが村を訪れるが、タンクレディは田舎の生活が嫌。
無垢な青年ラザロ(アドリアーノ・タルディオーロ)と知り合い、身を隠した自身を何者かに誘拐されたようにみせかける・・・
というところから始まる物語で、イタリアの一寒村の描写はエルマンノ・オルミ監督『木靴の樹』を彷彿とさせる。
なので「イタリア映画の農村リアリスモ映画だぁ」と思って観ていたら、タイトルロールのラザロが急峻な嶺から転落してしまうし、狂言誘拐だったにもかかわらず警察に通報され、村人全員が警察に連行されてしまう・・・
とはいえ、これだけならば、まぁ、イタリアン・リアリスモの範疇。
だが、映画はその後、あっというまに時空を飛び越え、現代にやってくる。
嶺から墜落したラザロはケガもなく、もと居た村に戻ると、すべてが荒廃しており・・・となり、驚天動地な展開。
前半、年老い、群れから離れた狼が人家を襲うようになり、その狼と対話を試みるひとりの男の寓話が語られるが、これが主要なモチーフ。
もうひとつは、ラザロという名前。
ラザロは、キリストの奇跡によって死後4日目に蘇生する聖人の名前で、無辜無垢の証。
「狼」を21世紀の文明と見立てたように物語後半は推移するが、後半を映画として活かしているのが前半の農村パート。
クライマックスは、論理的には理解不能の物語にもかかわらず、ある種の「奇跡の終わり」をみせられ、胸が熱くなるところがありました。
これ以上は、完全にネタバレしそうなので、書くのは止しておきます。
とはいえ、ただのイタリア農村リアリスモ映画ではないので、その手の映画好きには推奨をします。
評価は★★★★(4つ)です。
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2019年映画鑑賞記録
新作:2019年度作品:30本
外国映画29本(うちDVDなど 3本)←カウントアップ
日本映画 1本(うちDVDなど 0本)
旧作:2019年以前の作品:44本
外国映画34本(うち劇場鑑賞 8本)
日本映画10本(うち劇場鑑賞 2本)
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この記事へのコメント
宗教色のある映画は、時に残酷な現実をみせる傾向がありますね。そのあたりが不快感につながるかもしれませんね。