『誰もがそれを知っている』:さすが、イヤミスの帝王ファルハディ監督 @ロードショウ・単館系

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アスガー・ファルハディ監督の最新作『誰もがそれを知っている』、ロードショウで鑑賞しました。
本邦初公開、2009年のベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞の『彼女が消えた浜辺』以来注目を集め、欠かさず観ている監督なのだけれど、個人的にはあまり好きな監督ではありません。
さて、映画。

アルゼンチン在住のラウラ(ペネロペ・クルス)。
妹の再婚結婚式に出席するため、ティーンエイジャーの娘イレーネ(カルラ・カンプラ)と幼い息子を連れて故郷のスペインに帰省した。
そこでは、元大地主の父親をはじめ、実家で暮らす姉夫婦、今回結婚する妹に加え、元の雇人の息子で幼なじみのパコ(ハビエル・バルデム)と久々に再会する。
パコは、かつてのラウラの恋人で、彼女が金銭面で苦慮した際に、彼女の持ち分の土地を買い、その後、葡萄畑として再生して、いまは村での羽振りもいい。
そして、妹の結婚式当日。
家での披露パーティの夜、先に部屋へ戻ったイレーネの姿が見えなくなってしまう・・・

といったところから始まる物語で、主要な人物の姿が見えなくなってしまうのは出世作『彼女が消えた浜辺』と同じ趣向。
当初、自らの意志で行方をくらましたのではないかとも思えたが、ほどなくして脅迫メールが届いたことで、誘拐事件だと確信する・・・

ということで、この事件の中で、謳い文句にあるとおりの「隠していたはずの秘密と家族の嘘がほころび始める」ので、これまでの作風とそう変わらない。

これまでのファルハディ監督作品では、緻密とも言われる、事件が事件を呼び、当事者たちの闇があぶり出されるわけだが、どうも心の闇をあぶり出さんがための展開が鼻に付き、途中で鑑賞するのを投げ出してしまいたくなったのだけれど、今回は事件が起きるのも遅く、その後の展開も急がない。
その分、ラウラの気持ちをスター女優ペネロペ・クルスが「これでもか」的演技でみせ、さらに、スター男優ハビエル・バルデムが「これでもだぁ」的演技でみせるので、ぐいぐい惹き込まれていきます。

でも・・・

観終わって数日経つと、やっぱりファルハディ監督の嫌な嫌いな面が思い出されて、どうにも居心地が悪い。

それは、

誘拐されてから、日が経ちすぎ。
もう、娘の命が危険ではないかと思われる時点になっても警察には通報しない。
それほど、警察不信なのか?

にもかかわらず、義兄が紹介する元警官には相談し、単に、家族間の不信の募らせるだけ。

老齢の父親をはじめ、長姉夫婦も含めて、自分たちのせいで没落したにもかかわらず、自意識だけが過剰。

パコが事件当初から積極的にかかわる理由がわからない。
重要事項は映画後半で明らかにされ、それは彼も初めて知る。
そして、成功している葡萄農園の経営者であるにもかかわらず、雇人たちのことを気にせず、畑を手放すのは、やはり無責任。
パコの妻の言い分のほうが理がある・・・

と、理詰めのようにみえて、登場人物の心の奥底を表すための作り手の都合のいい展開になっているのは、過去作品と同様ではないかしらん・・・と思い始め、どうも、やっぱりファルハディ監督とは相性が悪い。

いや、もう、ぶっちゃけてしまうが、「狂言誘拐」ぐらいのユルイ話のほうが、どうも個人的には好みだったような。
ま、そうなると、ファルハディ監督の持ち味がなくなっちゃうのだろうけど。

さすが、イヤミスの帝王ファルハディ監督、と改めて思った次第。

評価は★★★★(4つ)です。

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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品:34本
 外国映画33本(うちDVDなど 3本)←カウントアップ
 日本映画 1本(うちDVDなど 0本)

旧作:2019年以前の作品:49本
 外国映画37本(うち劇場鑑賞 8本)
 日本映画12本(うち劇場鑑賞 3本)
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  • 誰もがそれを知っている

    Excerpt: アルゼンチンに暮らす女性ラウラは、妹の結婚式のため故郷スペインに帰省し、ワイン業を営む幼なじみの男性パコや家族との再会を果たした。 しかしパーティーのさなか、ラウラの娘イレーネが失踪。 巨額の身代金を.. Weblog: 象のロケット racked: 2019-06-28 04:14