『存在のない子供たち』:胸が痛くなる真実の衝撃作 @ロードショウ・単館系

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2018年カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『存在のない子供たち』、ロードショウで鑑賞しました。
都心でも、銀座・渋谷・新宿と3館の単館系映画館で上映中。
7月20日公開なので、既に4週目に入っているが、かなりの観客数のようです。
できれば、近くのシネコンでも上映してほしいところだが、夏休みは若者ターゲット映画のかき入れ時なので、上映は難しいかも。
とはいえ、わたしが観た回では、隣の席に中学生と小学生(ぐらい、推定)のふたりの娘さんを連れた女性がいましたが。
さて、映画。

レバノンの首都ベイルートのスラム街に暮らす少年ゼイン。
およそ12歳ぐらいだが、両親が出生届を出さなかったので、正確にはわからない。
先に傷害罪で少年刑務所に服役中のゼインが、両親を提訴した。
提訴事由は「自分を産んだこと」。
裁判の席で語られるゼインのこれまでの生活はすさまじいものだった・・・

というところから始まる物語で、監督は『キャラメル』の女性監督ナディーン・ラバキー
ゼインをはじめ、綿密なリサーチと、役柄と境遇の似た素人が起用されており、ヌーベルバーグ的でもある(映画はレバノンとフランスの合作)。

一家の暮らす一室は、配管が壊れ、なにかあるごとに床が水浸しになる。
そんななか、何人の子供がいるのだろうか。
一家は、(たぶん)偽の処方箋を使って薬物を購入し、それを溶かして服に沁み込ませ、乾いた服を少年刑務所に服役中の年長の息子に持っていくなんてことをやっている。
少年刑務所では、乾いた服から薬物を絞り出して、それを売りさばいている・・・

また、ゼインには一歳年下の妹がいるが、妹は初潮を迎えたばかり。
ゼインはそれを両親に悟られまいとしている。
というのも、初潮を迎えた娘は、人身売買同然のように嫁に出されてしまうから・・・

と、ノッケから驚かされることの連続。

妹が嫁に出されそうになる当日、ゼインは妹を連れて逃げ出そうとするが、妹は両親に捕まり、ゼインだけ家から逃げ出すこととなる。

街をさまよううち、赤ん坊を抱えたエチオピア人難民のラヒルと出逢い、彼女の幼い息子の世話をすることを条件にラヒルとともに暮らすようになるが、ラヒルも難民というよりも不法滞在民で、偽の身分証明書をつくるのに金がかかる。
そうこうするうち、ラヒルは警察に逮捕されてしまう。
ゼインにはゼインなりの良心があるので、ラヒルの幼い息子を抱えて、どうにか命を繋ごうとするが・・・

と、もう、ほんとうに想像を絶する境遇の連続。

日本でも、存在のない子どもだけが生き延びる『誰も知らない』(是枝裕和監督)という映画があったが、そんな比ではない。

「身分証があれば、スウェーデンでもトルコでも行ける」という男(これも人身売買者だ)の口車にのり、身分証を探しに元居た両親の部屋に戻ったところ、ゼインには身分証などなく、さらには嫁いだ妹が死んだことを知らされ、妹を娶った男のもとへ包丁を持っていき、遂には男を刺してしまう・・・

服役中のゼインのもとに母親が面会に来るが、母親は「神は奪うだけでなく、新たに生命を与えてくださる」といい、自分が妊娠していることを告げる。
自分と同じような境遇の子どもがまた生まれるのか・・・というやり場のない怒り、それが冒頭の裁判での訴えに繋がっていく。

存在証明のないゼインは、最後の最後まで笑わない。
が、最後の最後だけ、笑う。
それは、刑務所での犯罪者としての証明写真を撮る際のことなのだが、理由はなんであれ、そこにゼインがいたことの証明である。
痛ましいが、少しほっとするような、複雑な想いがしました。

評価は★★★★☆(4つ半)です。

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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品:55本
 外国映画46本(うちDVDなど 6本)←カウントアップ
 日本映画 9本(うちDVDなど 1本)

旧作:2019年以前の作品:62本
 外国映画48本(うち劇場鑑賞12本)
 日本映画14本(うち劇場鑑賞 3本)
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この記事へのコメント

2019年08月16日 23:09
今作、こちらではまだ公開されていないので、楽しみにしている作品です。
ずっしりと重そうですねぇ~。突き刺さりそうです。
幼くて無垢な子供が、親の都合に振り回される姿は、見ていて辛いものがあります。
りゃんひさ
2019年08月16日 23:22
>トリトンさん

突き刺さります。覚悟、よろしく。