『ある女優の不在』:舞台を変えれば他の欧米諸国でも映画化できそうな題材だね @ロードショウ・単館系

ある女優の不在.jpg

『人生タクシー』などのイランの名匠ジャファル・パナヒ監督最新作『ある女優の不在』、ロードショウで鑑賞しました。
パナヒ監督といえば、前作『人生タクシー』も自身が国内で映画を撮れないことを逆手に取った、なかなかニクイ映画でしたが、イラン女性の現実を扱った2000年製作『チャドルと生きる』が興味深い監督です。
今回は、『チャドルと生きる』の延長線上にある作品と言ってもいいでしょう。
さて、映画。

ある日、イランの人気女優ベーナズ・ジャファリ(本人)のもとに届いたショッキングな動画。
女優を目指して芸術大学に合格したものの、因習に縛られる家族によってその夢が断たれた娘マルズィエ(マルズィエ・レザエイ)は、村はずれの洞穴で首を吊った・・・その自撮り動画。
送られてきたのは監督のジャファル・パナヒ(本人)を通じてのこと。
ジャファリは、パナヒの運転する自動車で、マルズィエが暮らす辺境の村に向かうことにした・・・

といったところから始まる物語。
彼女が友人を通じて送って来た動画は本物かどうか、そして、彼女の本心はどこにあったのか・・・とある種のミステリー要素はあるが、ミステリー映画としては成立しない。

この序盤は、観客を映画に惹き込む役割は果たしているが、結果的には、ミステリー的カタルシスを求めている観客には拍子抜け。
2000年製作の『チャドルと生きる』の延長線上にある、イラン女性の現状を通してイランの現状を描いた作品で、古い因習をはじめ様々な制約・制限を受けているパナヒ監督の心中の吐露だろう。

1970年代後半のイラン革命で、イスラム国家としては女性の社会進出も後押しされるようになったが、この映画でみる限り、都市部以外ではそうはなっていないことが窺い知れる。
(劇中、「イラン革命」の言葉が何度か出ている)

また、地理的状況は詳しくはわからないが、舞台となる村はトルコに近いらしく、村内ではペルシャ語よりもトルコ語が用いられている。

ジャファリとマルズィエのほかに、革命以前から女優として活躍していた老女が登場し、それが原題「3 FACES」の由来となっているが、老女については多く語られず、残念な感じがする。

長廻しを中心に据えて、ラストの曲がりくねった道を捉えるなど、魅力的なな演出ではあるもの、舞台を変えれば他の欧米諸国でも映画化できそうな題材であるが故に、本来の力強さが陰に隠れた感じの映画になったような気がしました。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品:113本
 外国映画85本(うちDVDなど19本)←カウントアップ
 日本映画28本(うちDVDなど 9本)

旧作:2019年以前の作品:81本
 外国映画56本(うち劇場鑑賞14本)
 日本映画25本(うち劇場鑑賞10本)
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