『ラストレター』: 追記レビュー  @ロードショウ・シネコン

ラストレターワンシーン.jpg

岩井俊二監督の新作『ラストレター』、先にレビューアップしていますが、書き足りないことがあるので、追記です。

この映画では、ロマンティシズムの奥底にある「うしろめたさ」を強く感じたわけですが、それ以外にも印象的なところがありました。
それは、死者に対する想い。

「私たちが想い続けている間は、美咲は生きているんでしょうね」という意味の台詞です。
これは常々感じていることだったので、「そうだよ」と納得しました。

この「想い続ける」ことのメタファーとして用いられているのが、「美咲が読む卒業生代表の言葉」と、乙坂が書いた小説。
後者については映画の中でわかりやすく描かれているので、それ以上に言及することはないのですが、前者については補足しておきたい。

ご覧になればわかりますが、タイトルが示すものは、「美咲が読む卒業生代表の言葉」の原稿だったわけですが、これは乙坂との共同作業でした。
これが後の乙坂の小説『美咲』に繋がるのですが、前半で、効果的に使われています。

同窓会のシーン、裕里がスピーチの後、いたたまれなくなって席を立った時に、学年主任の老教師が、自宅で見つけたという「卒業生代表の言葉」のテープ、その音声が流れます。
出席者は神妙に聞いているわけですが、その前に裕里を美咲と勘違いしていることから、皆は実は「忘れている」わけです。
憶えていると言いながらの、忘れている・・・
この残酷性。

忘れない、思い続けていることのメタファーとして、最後の最後に出てくる原稿。
この対比、この語り口はあまりにも巧み。
そして、優しい。

もうひとつ補足しておきたいのは、キャスティングのシンクロニシティ。
相似形といってもいいでしょう。

鮎美と若き日の未咲を演じる広瀬すず、若き日の裕里と裕里の娘・颯香を演じる森七菜は二役なので、当然似ているわけですが、それ以外に、乙坂役の福山雅治と裕里の夫役の庵野秀明も似ている。
似ていないよ、と言われるかもしれませんが、ぼさぼさの髪、黒ぶちメガネ、無精ひげと雰囲気が似ている。
かつ、乙坂は小説家、裕里の夫は漫画家と職業も似通っている。
ぼさぼさの髪、無精ひげというパーツを通して、美咲の夫・阿藤役の豊川悦司も同一線上に並びます。

この相似形は念の入ったことに、裕里の実母役の水越けいこと義母役の木内みどりにも及び、さらには裕里の家で飼われることになる犬にまで及びます。
同じ犬種の大型犬が2頭。

この相似形が美咲と裕理に及ばないところが難点なのですが、これを最後に、乙坂が撮る鮎美と颯香の写真を牛腸茂雄ばりの構図に仕立てあげることで、相似形を生み出しています。

こう考えると、個人的には若き日の乙坂役を八代目市川染五郎に演じて欲しかったところ。
そう、松たか子の甥です。
徹底した相似形のマジックとしてのキャスティング。

そんな妄想も膨らんだわけですが、追記レビューはこれまで、といたします。

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この記事へのコメント

ここなつ
2020年01月29日 09:08
こちらにも…
相似形のメタファーは効果的に使われていましたね。
それがまた自然なんだな!
でもいやいや、若き日の乙坂は、神木隆之介一択でしょう!(笑)
りゃんひさ
2020年01月29日 09:17
ここなつさん

>でもいやいや、若き日の乙坂は、神木隆之介一択でしょう!(笑)
神木くん推しですね!
ぷ~太郎
2020年03月03日 16:26
いやはや、りゃんひささんのロマンティストぶりにはお手あげです。二人のビニール傘をさす少女の画面が出た時、うわ~と内心声がでました。これが岩井俊二監督の世界か~。オエッ!
私が観た回は周りにオッサンが多くて、これが好きなオッサン達なんですね。オエッ!
岩井俊二監督の作品は私には合わないようです。
りゃんひさ
2020年03月03日 22:58
ぷ~太郎さん

岩井俊二監督の世界が合わなくて、残念です。