『幸福路のチー』:台湾映画の基底に流れる自己に対する「納得感」 @DVD

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昨年11月にロードショウされた台湾製アニメ『幸福路のチー』、DVDで鑑賞しました。
台湾製のアニメは珍しく、個人的にはあまり記憶がない。
さて、映画。

台湾に生まれたチー(vc グイ・ルンメイ)、現在は結婚してアメリカで暮らしている。
生まれたのは1975年。
あまり裕福でない、といっても当時の台湾のどこにでもある町のひとつ、幸福路でだ。
久しぶりに帰郷することになったのは、祖母が死んだためだ。
台湾の原住民アミ族だった。
だから、子どもの頃、チーは「野蛮だ」と揶揄されたこともあった・・・

といったところから始まるハナシで、1970年代半ばに生まれたひとりの女性の人生と、彼女が生きてきた台湾の歴史を重ね合わせて描く異色のアニメ。

近現代を振り返る作品は、台湾映画に多く、そしてその多くが瑞々しく、かつ生々しい傑作である。
この映画も、そんな台湾映画らしさに満ちている。

チーの周りの人物は、祖母も父母も、友人たちも生き生きとしている。
特に、台湾人と米国人との間に生まれた金髪碧眼のベティが印象深い。
見るからに西洋人然としていながら、英語は話せず、話すのは台湾語だけ。
その異質感から、小学校ではいじめられる。
原住民の血を引くチーともども、マイノリティ。

美しい島台湾。
だが、意図に反して、外国からの力や人々や文化を受け入れなければならなかった台湾。

小学校の教育の場での台湾語禁止。
北京語を共用語としたためだが、太平洋戦争前は日本語だったのだが・・・

国民党政府下での戒厳令、陳水扁による民主化運動、台湾大地震・・・といくつもの時代の出来事と、そのときの自分を思い出すチー。
そこで描かれる半生をノスタルジックなものとして描いていない。

いまのわたしを形作ったもの、それはわたしがこれまで生きてきたいくつもの事柄に他ならない。

あのときは「こうだった」とは感じるものの、「あのとき、ああだったら・・・」とは決して思わない。
自己肯定というものとは少し異なる、自己に対する「納得感」とでもいうべきものだろうか。

そんな納得感を、アニメーションらしい手法で描いています。
シンプルなラインとフォルム、中間色でまとめられた色彩。
しかし、ときとして登場する、強烈にデフォルメされた構図。
静かな風のそよぎ、逆に吹き荒れる大風など、驚かされる場面がいくつも登場します。

ひとりの女性の生き方と台湾の近現代を重ねたストーリーと、アニメーションの手法が見事に融合した傑作アニメーションでした。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

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2020年映画鑑賞記録

新作:2020年度作品: 57本
 外国映画46本(うちDVDなど16本)
 日本映画11本(うちDVDなど 0本)

旧作:2020年以前の作品: 65本
 外国映画42本(うち劇場鑑賞 4本)←カウントアップ
 日本映画24本(うち劇場鑑賞 2本)
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